パリ・ドゥエ通りの模型店で見つけたフランス蒸気231K 82(Jouef HOゲージ)
先日、パリで購入してきたフランス製の蒸気機関車の古い模型をご紹介します。Jouef(ジョエフ)社のHOゲージ、231K 82です。
今年の秋の旅行ではパリでかつて妻が結婚前の4年間の留学時代に住んでいた場所に程近い17区ヴィリエにある短期アパートに滞在し、市内を歩いたり列車旅をしたりしながら観光しました。その合間に私の趣味の時間も少し作ってきています。
パリには楽しい模型店が多く、これまでも旅行のたびに記念として何か買ってきました。モンマルトルにほど近いドゥエ通り(Rue de Douai)には、古くから鉄道模型店がいくつか並んでおり、私にとっては非常に楽しい場所です。クリシー大通りという観光客の多い通りから一歩入っただけの静かな路地なのに、なぜか模型店が集まっているのです。
鉄道模型店は3軒が寄り添うように並んでおり、それぞれに守備範囲があります。ただ、土日は休み、月曜も休むことがあり、昼休みで閉まる時間もあるため、旅行中に訪れるには意外と計画が必要です。14年前の訪問では何度も通いましたが、8年前の旅行ではタイミングが合わず訪れられませんでした。今回が本当に久しぶりの訪問です。
その中のひとつ、DECO TRAINは、ヨーロッパメーカーのHOゲージ(87分の1スケール)の中古品を中心に扱い、ジャンクやパーツの販売、修理も行う昔ながらの模型店です。初めてだと少し入りづらい雰囲気で、年配の店主のもとに常連が集うような店構え。模型店は洋の東西を問わず、こうした光景が見られます。とはいえ、日本ではこうした個人経営の模型店は本当に少なくなりました。
なお、日本で最も一般的な小さなNゲージ(150〜160分の1)は扱っておらず、隣のTRANS-EUROPで多少扱いがあります。場所を探す場合は、地図アプリでドゥエ通りの鉄道模型店を検索するとわかりやすいと思います。
今回購入したJouef社製フランス国鉄231K 82は、動輪の大きな急行旅客用蒸気機関車の模型です。87分の1スケールで全長はおよそ285mm。製造は40〜50年前と思われ、当時の元箱入りでした。日本では需要がないため、まず見かけません。いかにもフランス機らしく、美しい装飾が随所に施されています。
旅行中に訪れたミュールーズの鉄道博物館 Cité du Train(シテ・デュ・トラン)に、よく似た急行用蒸気機関車が展示されていたので、この模型を購入したのですが、調べると実車はシテ・デュ・トランにはなく、現在はリモージュの鉄道施設で動態復元修理中とのことでした。フランスでは有名な機関車で、名列車を牽いた歴史を持つそうです。模型になるほどの人気機関車というわけです。
かなり古い年代物ですが、状態はとても良好です。車体だけでなく車輪やギアを見ても、ほとんど走らせずにコレクションされていたのでしょう。
店主に「よく見せてほしい」と頼むと、箱から取り出して「おお、きれいだなあ」とつぶやくほど。実車とは異なり、炭水車(テンダー)側にモーターと駆動輪があるテンダードライブ方式で、走行テストをお願いすると店内の線路で軽やかに走りました。まったく手入れをする必要のない状態です。
鉄道模型の世界ではドイツや英国、そして日本のメーカーが幅を利かせています。その中でフランス製、しかもフランスを代表する蒸気機関車の模型に興味を持つ日本人は珍しいのか、店主は終始ご機嫌で饒舌でした。日本の古い模型店に外国人が来て、C62やC57の人気機を欲しがるようなものかもしれません。それなら確かに嬉しいでしょう。
14年前にもこの店を訪れており、その時は少し若かった店主から客車模型を買いました。当時はHOゲージを走らせる線路など全く持っていなかったのですが、旅行の記念にワゴン・リ社のプルマン客車を1両だけ買おうとしたところ、「この客車は何両か繋ぐもんだよ!」と言わんばかりに、プルマン客車・食堂車・寝台車2両の計4両を買うことに。気の良い店主にうまく言いくるめられました。当時は円高で、4両買ってもそこまで高くはありませんでしたが、HOゲージは大きくて精密。箱入りでなくむき出しだったため、衣類で包むなどして持ち帰るのに苦労したのを覚えています。
シテ・デュ・トランには231K 82の同形機はありませんが、よく似た機関車はいくつか展示されていました。日本とは違い軌間(レール幅)が広く(日本の在来線1067mm、ヨーロッパは1435mmで新幹線と同じ)、スケール感がダイナミックです。日本の蒸気機関車は主に2気筒(C53のような3気筒機もありますが少数派)ですが、こちらは4気筒が主流。一度、4気筒蒸機の走る音を聞いてみたいものです。
14年前に買ったワゴン・リ客車を牽くのにちょうど良い機関車ですが、HOゲージの線路は展示用の直線レールしか持っておらず、走行はできません。電源はNゲージ用の大容量タイプが使えるでしょうから、機会を見てレールを買い足したいところです。
前回購入した客車模型のモデルとなった実車も、シテ・デュ・トランに展示されていました。アガサ・クリスティー『オリエント急行の殺人』の場面を再現した展示で、音声や車窓描写も再現されており、楽しめる工夫が凝らされていました。
HOゲージは欧米では一般的ですが、日本の住宅事情ではやや大きめです。そのため日本では150〜160分の1のNゲージが主流。私はNゲージのフランス車を持っていないので、実車が同じくらいの大きさのドイツ急行型機関車01型(フライッシュマン社製)の模型と並べて比較してみました。フライッシュマンのNゲージ01型はJouefよりずっと高価で上級の模型ですが、それでも車両自体の大きさが違うと迫力は段違い。やはり大きいほうが展示映えします。
質実剛健で機能的なドイツ機に対し、フランス機の華やかで優雅な美しさが際立ちます。
店主から模型を受け取る際のこと。
「持っていく袋はあるのか?」
と聞かれ、すでに荷物を入れていたパリのスーパー「モノプリ」のエコバッグを見せると、
「そんなのじゃ小さいだろう!」
と言って店の奥にいたスタッフに
「いい袋があっただろう、持ってきてくれ」
と頼み、出てきたのがイル・ド・レ(Île de Ré/フランス西部のリゾート地)のおみやげバッグ。バカンスで買ってきたものなのかもしれません。フランスではバカンスのために店を数週間閉めて遊びに行くことは普通です。
DECO TRAINの店名入り紙袋が出てくるかと思いきや、まさかのリゾート感満載の袋。しかも模型だけでなく袋まで中古品。私たちは行ったこともないイル・ド・レ。模型とも全く関係なし。
「他の荷物も全部ここに入るだろう!」
とエコバッグごと押し込んでくれ、ご満悦。仕方なくそのまま見送られ、リゾート帰りのような気分で店を出ました。
ドゥエ通り自体は静かな路地で問題ありませんが、表のクリシー大通りは地元の人、観光客、そしてスリも多く、危険なエリアとして知られています。こんな派手な袋を提げていたら格好の餌食なので、すぐに畳んで元のエコバッグにしまいました。
フランスの蒸気機関車模型は、日本で手に入る機会はごくわずか。だからこそ、旅先での“出会い”は特別なものになります。今回手に入れたJouef 231K 82は、模型としての造形美だけでなく、パリの小さな模型店や気の良い店主との思い出、そして14年越しの再訪という体験そのものが価値を添えてくれました。全く関心なかったフランスのリゾート地、イル・ド・レも行ってみたいと思ったくらいです。
次回パリを訪れた時、あの店を再訪する事になると思います。その時どんな模型と出会えるのか、旅の楽しみがひとつ増えました。ただ、ヨーロッパでは鉄道模型はかなり高級な趣味。円安でどんどん手が届きにくくなっているのが寂しいところです。






























































































































































































































































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